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20050510

CAN『MONSTER MOVIE』

MONSTER MOVIE

 本当はこのブログでジャーマン・プログレをもっと紹介するつもりだったんだよなぁ、と思いまして、今回はCAN 『MONSTER MOVIE』を。しかし何度も、 このCANというバンドのことを書こうとしては挫折してきました。いまいち何を書いたらいいのか思い浮かばないのです……。

プロフィール

 CANは68年に現代音楽・クラシックの指揮者をしていたイルミン・シュミット、シュトックハウゼン門下のホルガー・シューカイ、フリー・ジャズ畑のヤキ・リーベツァイト、 ホルガーの教え子のミヒャエル・カローリによって結成されました(結成当時はもう一人メンバーがいましたが、 1stアルバム製作時に脱退したそうです)。そして彼らは友人からケルンの古城のスタジオ※1を無償で借り、 セッションを繰り返していました。彼らは現代音楽に接していたせいか、不確定要素というものを取り入れようとしていたと思われます。 それもラジオの演奏やコイントスによる作曲※ 2といったものではない方法で(ホルガーはソロなどでラジオ演奏を行ったりしていますがね)。 彼らが取り入れた不確定要素はごく単純なもので、なおかつ非常に効果的なものでした。それは経験の無い人間、 つまりはド素人の人間をボーカリストとして迎え入れるというものだったのです。最初は黒人の彫刻家のマルコム・ ムーニーが就きましたが、わずか1年半ほどでマルコムが精神に異常をきたして脱退してしまい、日本人ヒッピーのダモ鈴木がCANで歌うことになりました。そのダモ鈴木も3年ほどで脱退してしまいます。 ダモ鈴木の脱退には諸説ありますが、多すぎですのでここでは割愛させていただきます。 その後は新しいボーカリストを迎えずに活動を続け、79年に解散しました。

『MONSTER MOVIE』、その内容

「Father Cannot Yell」

 『MONSTER MOVIE』はCANの1stアルバムで69年にリリースされました。上記のスタジオで、 2トラックレコーダーを用いて一発録りで作られた作品です。出だしの「Father Cannot Yell」から、 もうかなりおかしなことになっています。あたかも「これがドイツのロックだ!英米とは違うぜ!」 と宣言しているようです。構造がよく掴めないので、コピーをするのが大変そうです。 のっけからマルコムも素人っぷりを発揮しています。なんですかこれは!まだ69年なのにラップですか?いや〜、ラップですらない。 さすがド素人、何をやらかすか分かりません!この曲の序盤、銅鑼のような音(これもアルファ77※3という自作電子楽器?)を聞くと、 ついついニヤリとしてしまいます。

「Mary, Mary So Contray」

 2曲目「Mary, Mary So Contray」はかなり哀愁漂う曲です。一応バラードということになるんでしょうか。 この曲は結構まともです。特筆すべき点はあまりないのですが、 強いて言えばイルミンの弾くアルファ77がやたらノイジーでうるさいということでしょうか。

「Outside My Door」

 3曲目「Outside My Door」ですが、この曲も結構まともで特に書くことが思い浮かべません(笑)。強いて言うなら、 ミヒャエルのギターとマルコムのボーカルがカッコいいロックといったところですかね。あと、最後のほうのイルミンのアルファ77が面白く、 カッコいいです。

「Yoo Doo Right」※4

これぞCAN

 最後の曲「Yoo Doo Right」、これこそが『MONSTER MOVIE』 でありCANであると僕は思います。これほどまでに『MONSTER MOVIE』を、 そしてCANというバンドを端的に表している曲はないんじゃないでしょうか。およそ20分ちょっとあり、 レコードではB面全てをこの曲のために費やしています。これから書くことは「Yoo Doo Right」のみならずCANの曲・ 演奏の大半(は言いすぎだけど半分ほど)に当てはまると思います。

リズム隊に関して

 まず、繰り返しの多用ですね。ミニマル・ミュージックの影響は当然あると思います。 ホルガーのベースはオクターブをしつこいほどに繰り返し、とても呪術的な演奏です。ずーーーーっと聴いていると、 本当に呪術をかけられているのではないかと感じてしまうほど。ヤキはドラムを、ホルガーのベースに合わせるように叩いています。 またシンバル(いわゆる金物系)よりも太鼓ばかり叩いているので、ドンドコドンドコと、これもまた非常に呪術的です。このあたりが、 CANが似非エスノと言われる所以でもあると思います。

ギターとアルファ77に関して

 それからミヒャエルのギター、イルミンの電子楽器は、普通のロック・ポップスとは違い、 ドラマチックな展開やメロディはほとんど全くありません。普通ロックやポップスでは、それらの楽器が曲の物語性を描き、 聴く者を曲の中にグッと惹きつけるのですが、CANではそれらの楽器があたかも効果音のように鳴り響いています。

繰り返し・ミニマル

 彼らを含むドイツのプログレは――現代音楽のミニマル・ミュージックにも当てはまりますが――短いフレーズを繰り返したり、 ドラマ性を極端に少なくしたり全く無くしたりすることによって、聴く者を肉体的に、あるいは精神の奥底から曲(の中?) に惹きつけているようです。その意味でFaustなんかは、ジャーマン・プログレの中でもかなり特異な存在ですね (彼らも繰り返しを使うことがありますけども)。まあ僕は心理学や精神医学、聴覚認知科学に詳しくないので、 繰り返しが身体や精神にどのように作用するのか知りませんけどね。

ド素人大爆発

 あと最後に、この曲のマルコムは圧巻です!ボソボソと歌ったり、 息ごもるような発声が素晴らしい!

あとがき?――二人の異邦人ボーカリスト

どちらも凄い

 コメントにも書きましたが、ダモ鈴木が日本人ということでCANではダモ鈴木ばかりが注目されています。しかし、マルコム・ ムーニーも相当にカッコいいですよ。もちろんダモ鈴木も、英語で歌ってると思ったら突然日本語で歌いだしたりと、かなり凄いです(いや、 凄いのはそこだけじゃないんですが)。つまり二人とも凄いってことですよ。

マルコム参加作品

 マルコムのボーカルが楽しめるのは、今回紹介しました『MONSTER MOVIE』とアウトテイク集(ですが、 決して駄作集ではない!!!)『DELAY 1968』と、『SOUNDTRACKS』の中の数曲です。『SOUNDTRACKS』 の途中でマルコムからダモ鈴木に交代しました。ちなみに僕は上記3作を初期三部作と勝手に呼んでいます。 3つがセットになっているBOXらしきものを見たことがあるんでね。 3つのうち代表作はやはり『MONSTER MOVIE』 ということになるのですが、僕は『SOUNDTRACKS』も結構お気に入りです。(初期三部作以外にも『RITE TIME』という、 86年録音・89年発表のアルバムにも参加したみたいです。)

ダモ鈴木参加作品

 ダモ鈴木のボーカルが楽しめるのは『SOUNDTRACK』と『TAGO MAGO』、『EGE BAMYASI※5』、 『FUTURE DAYS』です。CANの(全作品の中での)最高傑作は『FUTURE DAYS』と言われているんですが、 ダモ鈴木のボーカルを楽しむならば『TAGO MAGO』をお薦めします。『FUTURE DAYS』 は最高傑作と言われるだけあって相当に素晴らしい作品なのですが、一つだけ注意点があります。それは編集という要素が加わったこと (これが最高傑作たらしめているのですけどね)により、それ以前の作品とは結構違いがあるということです。

あとがきのあとがき

 そういえばCANのSACD(スーパーオーディオCD)が作られたらしいですね。 なんでこんな少しマイナーなバンドのSACDをわざわざ作ったんだろう?需要があるのかな??

 つづく……早くも挫折しそうです。最近やけにオリジナル・ラブの渋谷系時代(?)の頃の曲ばかり聴いています。意外ですか?まあ、 この話を聞いてニヤリとする人が一人いると思いますけど……。ちゃんとCANを聴き込んで研究しないとなあ……(2005/5/5)。 ←実際には上の文章で完成ですから「つづき」ません。しかしオリジナル・ ラブに関するコメントを戴いたので、コメントの整合性を保つためこの文章は残しておきます^^

※1……その名もインナー・スペース・スタジオというらしいです。CANは古城、Faustは廃校かあ……いいなあ。
※2……ラジオ演奏はシュトックハウゼンの「短波」とか、コイントスはケージの「易の音楽」あたりが有名です。コインは3枚用いて、 2×2×2=8(通り)の事象をコインに委ねて記譜したそうです。「2×…」の2とは、コインの表と裏の2通りという意味です。 8通りというのは易の八卦を参考にしたらしいです。
※3……アルファ77という電子楽器は正体不明で、残念ながら僕はどんな楽器なのか形すら知りません。 CANのファンでもほとんどの方が、 どんなものか知らないと思います。
※4……「Yoo Doo」はVoodooと掛けたのではないかと、『ドイツのロック音楽――またはカン、ファウスト、クラフトワーク』 という本にありました(立ち読み)。
※5……トルコの野菜缶詰からとった名前らしいです。意味は「エーゲ産のオクラ」かな?『TAGO MAGO』の由来は知りません。

  1. Father Cannot Yell
  2. Mary, Mary, So Contray
  3. Outside My Door
  4. Yoo Doo Right
COMMENTS
マルコムのボーカルは大好きで、ダモさんもいいけど、別の味があっていまだに大興奮します。
奇妙で素晴らしいバンドですが、説明のしようが無い音楽ですよね。聴いてみてそれぞれが胸の内にCANを抱いてくれればOK、といった感じでしかコメントできないです。
オリジナルラブの顔が濃い人(タジマ)がうちの近所をふらついていて、もの凄く怖かったです。あとちょっとで110番。
でも初期の頃のオリジナルラブは異質な感じですよね。CANとセットで聴くべきです。
Posted by 森本 at 2005/05/06
僕もマルコムのボーカルは大好きなんですよ〜。ダモさんが日本人ということで、マルコムは陰に隠れてしまっている感がありますけどね。ボソボソと歌ってるのがたまらないです。
カンは、ファウストなんかと違って、ちゃんとした(?)バンド演奏をやっているのにどうも書きづらいです。なので明日はカンのことを他の人がどう書いているのか本屋で調べてこようかと。

田島さんは関根勤ばりにクドく暑苦しい顔をしていますからね。110番ですか(笑)
オリジナル・ラブの初期の辺は聴いたことが無いんですよ。いま聴いてるのは「朝日のあたる道」の辺りのもので。この辺って初期にあたるんですかね?
Posted by よしだまこと at 2005/05/06
一応初期と思われますけど、それ以前のなんともいえない感じの曲が地味で最高です。
でも渋谷系全盛の頃の曲もけっこう楽しめますよね。わりと好きだったりします。
ポップならそれでいい、というのが僕のタジマさんへの感想です。
Posted by 森本 at 2005/05/07
そうか、初期というと「接吻」以前になるんですかね。
そうなると僕は年齢的に小学生とかになってしまうので、そのあたりの曲はリアルタイムでは聞いていないんですよ(^_^;)
でも「月の裏で会いましょう」と「接吻」はリアルタイムではないけれど、中学生のころに聞いていました。

初期の代表曲を聞いてみたのですが、田島さんの声質とか歌唱法が違いますね。
「月の裏〜」なんかは、今回久々に聞いて「この曲ってオリジナル・ラブだったんだ」と気づいたほどです。
Posted by よしだ at 2005/05/08
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